私がある中堅商社の営業職をしていた時の話です。
その会社の取引先はかなりの大企業もあり、扱いには神経を使いました。
私が担当したのも、製品のシェアが世界有数の誰もが知っている企業でした。
自社の製品を売り込む為には、現在の他者のシェアを切り崩していかないといけません。
その為に仕事終わりに、取引先の管理職などを会食にお誘いする訳です。
そこで困ったのが、私はお酒が飲めません。飲まないのではなく、アルコール分解ができない為飲めないのです。
接待をする側としては、まさに大きなハンデを背負っている状態でした。
一時期はウコンのドリンクなどを事前に飲んだりしてみましたが、はっきり言って効果はありませんでした。
次にやったのが、ひたすらサービスに徹するというやり方です。
給仕のまねごとや、カラオケを歌い、面白そうな話をして盛り上げるなどです。
一定の効果はありましたが、お酒を飲んでいる人達は、同じように飲みに付き合ってくれる人間しか信用しない事がわかりました。
これでは肝心の商談へつながりません。
普段は営業先で接していると穏やかな人達も、お酒が入ると信じられない事を言ったり、当然絡んで来たりする場合がありました。
私は基本酒飲み連中が大嫌いでしたので、接待とは言えどスルーするのに大変苦労しました。
相手もこれが接待とわかっているので、こちらが言い返さないのを良い事に割と失礼な事や下世話な事も言ってきて閉口しました。
どうしてもお酒を飲まないと進展しそうにない時は、最後の手段で水割りをかなり薄く作ってもらい、それをチビチビと舐めながら飲んでいる振りをしてしのぎました。
今ならアルコールハラスメントというのがありますから、無理やり飲めない人にお酒はすすめません。断っても別にトラブルになる事は少ないでしょう。
しかし私が営業をしていた10年程前は、まだアルコールハラスメントが世に出てきていない時代で、まさに俺の酒が飲めないのかの世界でした。
ノミュニケーションという造語がまだ生きてた当時、お酒には良い思い出がありません。
タバコは毛嫌いする人達もお酒にはすこぶる寛容なので、飲めない私は不思議でしょうがありませんでした。
今ならノミュニケーション自体しない会社が多いので、そこまで苦労しなかったでしょうね。